移住考察
これまでブログにUPしたものを整理したものです
移住者としての目線と、移住者を受け入れる地域として目線
それぞれ考えたいと思っています
この文章は現時点でのあくまで個人的な見解です
また、地域や田舎とは特定の地域をさすものではありません
私自身の考察を体系的にし、深めることを目的としています
今後、加筆することも考えられます

移住者のインタビューで、なぜ北斗市は移住者を増やしたいのか?という疑問をなげかける方がいました。多くの自治体にとっては、人口減少社会において人口を増やして税収を増やすというのが本音だと思います。はたしてそれでいいのでしょうか?郊外に宅地を造成し、そこに移住者が住めばそれで終わりでいいのでしょうか?それでは、単に別荘地ができたようなものです。
「2,000人の人口が2,500人になってどうするのか?少人口でも幸せな方法があるはず」とは、島根県旧匹見町元町長で「過疎町長」と呼ばれた故大谷武嘉の言葉。単に転入者の増加目指すのではなく、地域に有用な人材の増加を目指すべきではないでしょうか?地域に有用な人材とは、地域に住み、地域に根差したなりわいを行う人たちです。そうした人達は、地域の資源(ハード面だけでなく、人材も含めて)を活用し地域を盛り上げる人達です。移住政策に成功した、先行自治体には必ずキーマンといえる人材の存在があります。
なぜ北斗市は移住者を増やしたのかという問いに対して、地域の資源を活用してくれるキーマンを探すためと私は答えたいと思います。
移住者に選ばれる地域とは、地域に憧れる何かがあるということ。風景・景観、環境(生活・教育・仕事)などが考えられるが、どの要素を魅力的に感じるかは勿論、千差万別である。これに加えて、移住者が集まる地域では、
①魅力的な暮らしをしている人がいる。
②学びたい・受け継ぎたい技術がある。この人と一緒に仕事をしてみたい
③地域・住民が独創的な取り組みをしている。
などの要因ある。また、魅力的な暮らしをしている人の元に人が集まるとも言われている。
魅力的とは、共感できるということだと私は思う。SNS時代を反映して、移住においても共感がキーワードになっている。共感できる人が発信する情報は、風土であれ、景観であれ、受け入れられると感じるのではないか。魅力的な暮らしをしている人がライフスタイルを情報発信する。自分の求めるライフスタイルに合致する先輩がいると移住の後押しになる。地域に興味を持つという点において効果的な手段である。そして、なにより住民自身が住み続けたいと思う地域こそが移住者に選ばれている地域に他ならない。
移住者の少ない地域にはそれなりの理由があって、移住希望者は移住者が多い地域を選ぶとされる。しかし、移住者数として統計的に把握することは難しいと言われている。では、どのように移住希望者は移住者が多いと判断するのだろうか。受け入れ体制が整い、すでに移住者のコミュニティが形成されているかどうかが判断基準のひとつと考えられる。つまり移住者の顔が見える地域だ。これらの地域では移住者も地域に溶け込みやすい。
都会に暮らしていると様々な情報があふれ、つながっている感覚を抱く。しかし、ひとたびネットワークを切断すると、実は様々なものから分断されているに気が付く。田舎は何もないようで様々なものとつながっている。手を伸ばせば、つながりを意識することができる。移住者に話を聞いて見ると「田舎は人間関係が濃い」と口をそろえて語ります。でも、私にはそれがマイナスイメージで語っているようには思えないのです。ある方は、いつも子供を見る目があるから安心だと。朝、野菜が玄関に置いてある(これは田舎あるあるですね)。
北斗市は山があり、海があり、漁業や農業が盛んです。都市部にも田舎にも近く。“ちょうどいい”つながりがあります。人とのつながり、自然とのつながりを意識することができます。アドラーの高弟ドライカースは、「人間の基本的欲求は所属である」と述べています。田舎のつながっているという感覚こそ、所属している感覚を実感するものなのではないでしょうか?濃い人間関係のなかでお互い助け合って暮らしていく。田舎という共同体で、貢献的に所属する。このつながりを意識して、自分自身を見直し、新たな価値観を創造する。田舎に暮らす意味だと私は考えます。そういった意味から、移住とは価値観の創造であると私は思うのです。
移住施策における情報発信を考えるうえで最も重要なことは、何を実現するための情報発信なのかということ。つまり、情報発信の目的を明確にすることだと思う。東海大学文学部教授の河井考仁氏は「この地域はどのような地域を目指すかを明確にしないまま地域を発信することはできない」と述べる。移住における情報発信は、ファンを増やす→交流人口を増やす→移住・定住を増やす。つまり、地縁をつくるということを目的に行われる。この場合、住む土地にもとづく縁故関係のような狭義の地縁ではなく、行ったことがある、ファンまでも含めた広義の地縁を言う。なぜなら、人々は知らない土地には移住しないからである。
広義の地縁づくりを目的と考えた場合、一市町村に限らず、地域としての魅力を高める必要がある。例えば、北斗市で考えれば、仕事や医療機関の問題は、函館圏として考えることが必要である。逆に、北斗市や七飯町には函館市にはない、自然環境や観光名所がある。お互いを競合的なライバル関係とするのではなく、協力的な連携関係を築かなければならない。移住施策としての情報発信は、地縁づくりを目的として、地域として協力的な連携関係を築きながら、お互いの魅力を高めつつ行うものでなければならないと考える。
移住相談においては、住宅・仕事の情報提供が大きなウェイトを占める。今回は仕事について考えてみる。
自治体が公式サイト等により、発信する求人情報は次のように分類できる。
①自治体サイトで紹介
一覧、PDF形式で紹介
→ちとせお仕事情報局、
②外部サイトで誘導
企業情報をストーリー形式で紹介、詳細な求人情報
→函館しごとネット、ワークとかち、ふらのジョブサイト、はたらくあさひかわ
③通年雇用促進協議会等のサイトへ誘導
一覧、PDF形式で紹介
→釧路地域通年雇用促進支援協議会、日高中部通年雇用促進協議会
④ハローワークのサイトへ誘導
市町村ごとの情報を抜粋した一覧をPDF形式で紹介
⑤求職者を登録、人材バンクを運営
求職者の資格や経歴をサイトで紹介する
→酒田市(山形県)、深谷市(埼玉県)、弟子屈町
⑥移住・定住サイトより都道府県のIJU支援サイトへ誘導
北斗市の場合、南渡島通年雇用促進支援協議会があるものの、これはあくまで、季節労働者を対象にしたものである。
移住希望者が相談に訪れた場合、現状において紹介できるものは以下の窓口を紹介することに限られる。
http://rodents0812.wixsite.com/hokuto/blank-6
移住希望者が求める求人情報は、ネット検索すれば求められるような情報ではない。これは住宅に関しても同様である。例えば、空き家バンクの意義は、不動産業者が利益でないと手を出さない物件を紹介することにある。仕事に関しても、同様の事が言える。求人サイトに掲載されない情報を求めて訪れるのではないだろうか。
求人誌や求人サイトに載らないような情報函館しごとネットふらのジョブサイトなどは企業情報をストーリー形式で紹介、詳細な求人情報も興味深い内容。求職者の資格や経歴をサイトで紹介する弟子屈町の人材バンクも面白い取り組みである。工夫次第で人々を惹きつける取り組みができる。
移住の窓口と担当課との密な連携が前提であるが、日々の業務で入手した情報をもとに地域の休・廃業などの情報から、事業の引継ぎを希望する移住者とマッチングをおこなうも考えられる。事業継承と移住者のマッチングはこれからの農山村の移住施策を考えるうえで重要になると考える。事業継承については別の機会に掘り下げて考えたい。
移住オピニオンによる現地ツアーに参加いただいた。ふるさと郡上会の小林謙一氏のヒアリングをもと考えたい。
小林氏によると岐阜県郡上市は移住者に対して「オールウェルカムではない」と話す。私はこの発言を聞き、正直なところ傲慢とまでは思わないまでも随分と強気だと感じた。しかし、その理由を聞き、すぐに納得をした。行政が税金を投入して移住者を支援するのは地域を元気にするため。支援するには地域コミュニティへの参加が前提だと言う。そのことを理解してくれる人に対しては全力で支援しますとメッセージを送る。そのような移住者の定着率は高く、現在は定住の支援の段階にあると言う。一方、地域コミュニティに関わらず、悠々自適に暮らしたい人は窓口として税金を使って支援しないし、そういう人の定着率は低いと言う。
コミュニティに参加し地域のために何かをしようとする意志のある人は、その地域にとっては移住者であるが、コミュニティに属さず、悠々自適な生活をする人は、地域にとっては単なる引越しにすぎない。これらの人たちの定着率が低いのは、窓口が支援しないからでななく、もともと定住する意志が希薄だからとも言える。コミュニティへの参加は言うまでもなく、本人の意思ではあるが、こと税金を投入して支援する場合においては、住民のコンセンサスが欠かせず、費用対効果の視点が常に必要ではないか。実際、税金で支援した移住者がすぐに他地域に移住してしまい、費用の返還等が問題になっている自治体も存在する。
小林氏は「人が移住を覚悟するのは、最終的には人の縁である」と話す。移住先進地に見られる、いわゆる“人が人を呼ぶ”状況を作り出すことが必要という事。そのために行政ができることは、その土台作りである。行政が移住者を選ぶことはできない。しかし、地域住民との話し合いで、どのような移住者を求め、どう支援していくのか、明確なメッセージを送ることはできる。このような過程で、住民が少なからず抱く、なせ移住者を募るか(もっと言えば、住民生活を良くすることに税金を使ってほしい)という疑問も解決することができる。移住者を増やして地域を元気にしたいという<目的>を共有することができる。つまり、オールウェルカムではない移住施策が、移住者の定着率を上げ、移住者も地域も、みんなが幸せになる移住を実現するのではないだろうか。